「本格的なビジネスシューズを顔をしているのに、スニーカーのような履き心地」を謳う、アシックスのテクシーリュクス。
後編では、実際に靴を磨いてみて、どの程度本格靴の風格が漂うのか、そして実際に長時間歩行してみてどうだったのかをレビューします。
前編をご覧になっていない方は、ぜひそちらを最初に見て下さい。
1.テクシーリュクスを磨いてみる
では、さっそく実際に磨いてみます。
今回磨かれる靴たち。左がテクシーリュクスのゴアテックス(TU-8014)、右がついでに磨かれるChurch’sのBrisbaneです。(ソールを張り替えつつ16年も愛用する一足です。)
使用するのは、サフィールのクリーニングローション、クレム1925、ミラーグロスです。
クリーニングローションで古い靴墨を除去&保革し、クレム1925で油分と色艶を載せ、ミラーグロスで手早く艶出しする作戦です。
①クリーニングローション
納品時の仕上げは、黒系統の靴墨でした(青が入っているかと思ったのですが違いました)。
今回は比較するために、まず左側(右足)だけ処理していきます。 写真は左側のみクリーニングローションで拭き上げたところ。かなりマットな感じになりました。
靴は、出荷時にある程度靴墨が塗られているので、いったん”化粧落とし”をすると、艶出しが楽になります。(Amazonなので大丈夫かもしれませんが、長時間放置されている可能性もあるので、水分と油分を入れる意味合いもあります。)
②クレム1925
サフィールノワールのクレム1925をペネトレイトブラシを使って塗り込んでいきます。
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ローションでシットリさせたはずなのですが、かなり乾燥していたようで、塗った先からどんどん油分が浸透していきました。かなり乾燥していたようです。
塗り終わり、少々休ませた後に、豚毛のブラシをかけたところ。
この工程の最後に、ストッキングで擦ります。鈍い艶が出てきます。
普段の靴磨きはこの程度でも良いのですが、今回はもう少しつま先とサイドウォール(外側側面)に艶を出していこうと思います。
③ミラーグロス
サフィールのミラーグロスは、1回で輝きが出て時短になるので、とても重宝しています。
布でミラーグロスを少量取り、水を加えながら塗り込みました。1回でコレだけの艶が出ます。
左が磨いたもの、右が購入時の状態ママ。 これだけでだいぶ高級感が出ます。
上が磨いたもの、下が購入時の状態ママ。 サイドウォールとかかとも、つま先ほどでは無いですが輝きを出しました。
右側(左足)も同様に①~③で磨き込みました。
これだけで、本格靴と見間違うくらいの風格が漂います……。
とはいえ、(革が育っている/育っていないの違いもありますが)Church’sのBrisbaneと比べると、革の艶というかシットリさに差が出てしまいますね^^;
ただ、こうやって直接比較しないと安っぽさが分からないのは、とても凄いことです。
2.テクシーリュクスで長時間歩いてみる
それでは、実際にテクシーリュクスで長時間歩いてみましたので、その時の感想を共有します。
本格靴よりも、おろしたばかりのスニーカーに近い
まず、足入れから歩き始めの感想は、「おろしたばかりのスニーカー」の感覚に近いです。
通常の本格靴であれば、甲革全体をギュッと締め付けられた感覚や、履き口周辺の硬さなど、おろしたとき特有の「硬さ」がありますが、それがありません。
良い言い方をすれば柔らかい履き心地で、悪意のある言い方をすれば少しグニャグニャする感覚、でしょうか。特に、足裏に凄く柔らかいインソールを入れている感じがします。
私はアシックスのスニーカー、オニツカタイガーを愛用しているのですが、甲革部分はそれよりは少し固めで、足裏はオニツカタイガーと似た様な感じです。
立ち続けても足裏が痛くならない
この柔らかめの靴底が奏功したのは、歩いているときよりも長時間立っているときでした。
本格靴も、履き込むことにより靴底のコルクが沈み込んで足を広い面積で受け止めるようになるため、長時間立っていても疲れづらくなります。
ただ、このテクシーリュクスは立っているときの疲れづらさは本格靴の体感半分くらいです。(すごい)
年配者の膝にも優しいかも
私の服好きや靴好きは、着道楽だった亡き祖父の影響が大きいのですが、彼は元海軍軍人らしく「短靴(革靴)」をとても大事にしていました。
しかし晩年、祖父は膝を痛めたこともあって、愛用していた短靴が履けなくなり、ジャケパンに似合わないスニーカーを泣く泣く履いていました。
このとき、テクシーリュクスがあったら良かったのになぁ、と思うと同時に、似た様な状況にある年配者にも、オススメできると感じました。
雨天×タイルで圧倒的に滑らない
もう一つ感じたのが、雨天時の駅構内、それも滑りやすいタイルが多い東京の地下鉄駅構内の床において、圧倒的に滑りづらい、という点です。
従来の、本格靴向けのラバーソールでも革底よりはマシですが、それでも急いでいるときやタイルでは滑りやすく危険です。
いっぽうで、テクシーリュクスは水はけが良いのか、とても高いグリップ力を発揮しました。
歩く楽しさは本格靴の方が上か?
一方でデメリットも感じます。
まだ何日も履いていないので結論は出せないのですが、なぜか歩く楽しさは本格靴の方に軍配が上がるように感じます。
これは精神的なものかも知れませんし、あるいは本格靴の適度な重さや締め付け具合、自身の足形に沈み込んだ靴底が生み出しているのかも知れません。 あくまでテクシーリュクスは本格靴の格好をしたスニーカーなんだな、と感じています。
3.おわりに(前編、後編を通じて)
タイトルの「買いかどうか」ですが、私的には間違い無く「買い」です。
特に、荒天時にスーツスタイルで外回りをする営業職の方、長時間の立ち仕事が必要な方、僻地の拠点でもスーツ姿で乗り込む監査系業務の方(この例えはピンポイント過ぎるかもしれませんが^^;)、は、1足は持って置いて損はありません。安いですし。
テクシーリュクス、この値段にしては見た目も履き心地もかなり良く、かなりの高コスパです。さすが、世界大手のシューズメーカーアシックスの製品だけあります。感服です。
ただ、外観や所有欲という観点を追求するのであれば、本格靴には及ばないのは確かです。これは優劣というよりは、すみ分けの問題ですね。