オーバーコート

コート袖口の生地タグ、付けたままがオシャレ?

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先日、とあるクラシックコンサートで、袖口に生地タグがついたままのオーバーコートを着た方がいました。

私が妻に、「あの人、生地タグを取り忘れてるね」という話をすると、「いやだ、あれはオシャレで付けてるんだよ」と笑われてしまいました。

私にとっては初耳だったのですが、調べると、コート袖口についた生地タグは、「とる」「とらない」で一定の議論が存在しているようです。

今回は、ビジネスマンのファッションとして、コート袖口の生地タグをとるべきか、とらざるべきかを考えます。

1.生地タグとは?

そもそも生地タグとはどんなもので、何のために付けられるのでしょうか?

生地タグは、製造者、ブランド、製造国、繊維の種類(ウールなのか、モヘアなのか)、繊維の品質(Super120’s等)などが書かれている、長方形の布です(冒頭の写真参照)。

紳士服の世界で「織り(おり)ネーム」とも言い、高級布地を使ったジャケットやコートには、生地タグがつくことが多いです。

時代によってデザインが変わるので、ビンテージ生地好きにとっては、その生地が織られた年代が特定できたり、並行なのか正規代理店経由なのかが分かったりと奥深い物だったりしますが、この辺は話が長くなるので割愛します……^^;

 

2.コートにおける生地タグの役割

袖口における役割

コートの生地タグは、ジャケット同様、一般的に左胸の内ポケット周辺に縫い付けられます。(そして反対側には、メーカーやテーラーのタグがつきます。)

しかし、吊し(既製品)で販売される際には、一々内側の確認が面倒になるため、織りネームを入れたビニールケースを袖ボタンから吊したり、袖口に直接縫い付けたりします

つまり、袖口の生地タグ(織りネーム)は、そのコートがどんな生地で製造されたかを、販売時に分かりやすく提示するためのものです。

そして生地タグは、しつけ糸(製造/販売/輸送時に、シルエットが崩れないようにするための糸)と同様に、着用前に切るのが一般的でした。

付けたまま着るメリット

一方で、冒頭の体験や、ネット上の書き込みを見る限り、その常識が変わりつつある可能性があります。

私個人としては、コートの袖口に生地タグを付けたまま着たことは無いですし、これからも着る可能性は少ないと思いますが、コートに生地タグをつけることによるメリットを考えてみました。

「高いコートを着ている」アピールができる

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△カシミアとか、ビキューナとか、高級服地の代名詞。(写真は亡き祖父のコートで、私なんぞは間違っても手が出せません……。)

高級服地である証明を、他人の視線を集めやすい位置に掲示することで、高いコートを着ていることをアピールできます。 裏地に縫い付けられたタグでは、見せびらかせませんからね。

特にコートはジャケットに比べ、生地代金が価格に占める割合が大きく、効果が大きいです。

これにより、高い代金を支払える能力や、安定した収入のアピールにも繋がります。

デザイン上のアクセント

メンズコートは基本的に平坦なデザインです。特に、良い生地が使われやすいチェスターフィールドコート(私が冒頭で目撃したものもコレでした)やステンカラーコートは、比翼仕立てにしてボタンすら隠すほど、装飾を削っています。


△ 比翼仕立てのステンカラーコート

従って、あえてタグを残したままにすることで、アクセントとなり、デザイン上の差別化に繋がる可能性があります。

 

基本的には、メリットは上記2点だと思いますが、如何でしょう……。(他にもあるという方、ぜひコメントください。)

 

3.生地タグをとるべきか、とらざるべきか

さて、この生地タグ、とるべきかとらざるべきか。

私のスタンスを明確にしておくと、「①大前提として個人の自由で好きなようにすれば良い」、心配な場合は「②ブランドの推奨を確認する」、そして「③誤解を避けたいビジネスマンはとるべき」です。

①大前提として個人の自由で好きなようにすれば良い

本サイトでは何度も書いていますが、基本的にはファッションは、他人の迷惑にならない範囲において、自分のしたいようにすべきだと考えています。

「ルール」や「マナー」は様々存在しますが、最後に決めるのは自分自身です。(なお、個人的には、ルールやマナーを知った上で決めるべきだと思います。)

従って、自分のコートなのだから自由に着るべきで、生地タグを付けたいと思えば付けたままにすれば良いし、取りたければとれば良いでしょう。

②ブランドの推奨を確認する

とはいえ、「自由に」と言われても困ってしまう、そんなことで決定疲れしたくない、という方にオススメなのが、メーカーやブランドの推奨を確認することです。

方法は簡単で、「生地タグが四隅で軽く止められていて、取れやすい状態」であれば、取りましょう。 メーカーサイドとしては利用者が購入後に生地タグの取外しを前提に製作していることから、ブランドの推奨としては「取る」が正解です。

一方で(少ないと思いますが)、「生地タグの周囲が万遍なく綺麗に縫われており、簡単には取れない状態」であれば、「取らない」がメーカー推奨です。

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△ 写真は袖口ではありませんが、万遍なく縫われているタグのイメージ(千鳥掛け)

どっちか迷う場合は、購入店に相談してみてください。(ネット上の書き込みを見るとどっちつかずのタグも存在するようで。取るのも難しく、付けておくのも不安定という、ポリシーがいい加減なメーカーは淘汰されてほしい……。)

③誤解を避けたいビジネスマンはとるべき

ファッションとは、自己を「どう見せたいか」「どう見てほしいか」を表現する手段の一つです。

「購入後はタグを取るもの」という認識が多い中で、「タグを取り忘れた無頓着な人」という誤解が、自分のビジネスにとってマイナスになると判断するのであれば、取る方が良いでしょう。

逆に、タグを敢えて付けていることを打合せのアイスブレイクに使うなど、プラスになると判断する、または、本項の①や前項の「付けたまま着るメリット」を勘案し、マイナスを超えるメリットがあると判断するのであれば、付けたままにすれば良いでしょう。

 

4.おわりに

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もしかすると、本当に袖口に生地タグを付けたままにするのがトレンドになるかも知れませんし、既にトレンドになっている可能性もあります(妻曰く、婦人用のコートを中心にそういう流れがあるとのことで……)。

そのうち、しつけ糸、値札、クリーニングタグなどもつけたままがトレンドになる可能性すらありますが、それを口に出したり、批判するは野暮なのかもしれません。

さすがに後輩やチームメンバーが、客先訪問でしつけ糸を付けたままにしていたら指摘するかも知れませんが。

 

みなさんはこの問題についてどうお考えでしょうか。宜しかったら、ぜひコメント欄からご意見をお寄せください。

 

 

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Shichilie

新入社員時代に、着道楽だった祖父の影響でスーツスタイルに興味を持ち始める。様々な店で60着以上のスーツやジャケットをオーダーし、30足以上の革靴を収集・ローテーションしてきた。

趣味が高じて、2009年(平成21年)からブログでの情報発信を開始。

東京生まれの東京育ち。 好きな言葉:自我作古

詳細:「サラリーマンのファッションを考える」について

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